〜レビー小体型認知症の方との関わりから〜
こんにちは、徳丸です。
訪問介護の現場から、
心に残る一コマをお届けします。
レビー小体型認知症をご存じでしょうか。
この認知症の特徴のひとつに、
「幻視(げんし)」
と呼ばれる症状があります。
実際には存在しないものが、
まるで本当に見えているかのように感じられることがあるのです。
レビー小体型認知症という病気には、
ちょっと不思議で、
時には「えっ?」と驚かされるような特徴があります。
ただの物忘れとは違い、
幻視(そこにないものが見える)、
妄想(事実ではないことを信じ込む)、
注意力や意識の変動などが出てくることがあるのです。
今日は、実際にあったエピソードを通して、
レビー小体型認知症の特性を紹介したいと思います。
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わんちゃん、今日も元気にお水飲んだ?
ある日、ご利用者様が一生懸命、
床に向かってコップでお水をあげていました。
「わんちゃん、お水飲まないとダメよ」
私たちには、もちろんワンちゃんの姿は見えません。
でも、ご本人は、そこに大切なペットがいて、
ちゃんとお世話しているのです。
これは「幻視」と呼ばれる症状の一つ。
レビー小体型認知症の方は、
リアルな幻を目にすることがあります。
そして、その存在があまりにも“当たり前”に感じられるため、
私たちが「いないですよ」
と言っても、驚かれてしまうことも……。
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布団が濡れていたのは…悪い男の仕業!
別の日、ベッドが少し濡れていたことがありました。
ご本人に「濡れてますね、風邪引くといけないので着替えましょう。」
とお聞きすると、真顔でこうおっしゃいました。
「昨日の夜、
悪い男が窓から入ってきて来てね、
私に向かって水をかけたのよ」
もちろん、誰かが入ってきた事実はありません。
でも、本人にとっては“確信”をもってそう信じている。
これもレビー小体型認知症に見られる「妄想」の一つです。
時には「物を盗られた」
「誰かに嫌がらせをされた」
といった内容の訴えも出てきます。
ご本人の中では現実そのものなので、
否定せず、そっと気持ちに寄り添うことが大切です。
小人さんたちの行進を待って
そんな幻視にまつわる、もうひとつの忘れられないエピソードがあります。
ある日、ご飯の時間になっても、なかなかお箸が進まないAさん。
「どうかされましたか?」と声をかけると、Aさんはテーブルの上をじっと見つめながら、こうおっしゃいました。
「小さい人たちが、たくさん通ってるから待ってるの。」
……小人の行進!?
思わずファンタジーの世界が頭に浮かびました。
私はちょっと笑いながら、こう答えました。
「じゃあ、小人さんたちが通り過ぎてから、ゆっくり食べましょうか。」
するとAさんはにこっと笑い、ようやくひと口。
ほんの少しの共感で、ふっと心がほぐれるような瞬間でした。
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幻視の奥にある、心の風景
幻視という症状は、
時にご本人やご家族を混乱させ、
不安にさせることがあります。
けれど、それが単なる「症状」ではなく、
「その方の感じている世界」だと思うと、
私たちの関わり方も少し変わってくるように感じます。
否定せず、受けとめ、共に“待つ”という関わり方。
それは、目には見えない信頼を
少しずつ育てる営みなのかもしれません。
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心のまなざしに、そっと寄り添う
幻視があっても、
その方が不安でなければ、
無理に訂正する必要はありません。
むしろ、私たちにできるのは、
その見えない「心の風景」にそっと寄り添うこと。
小人たちの行進を一緒に待つように、
今日も、誰かの“世界”に寄り添えるケアを大切にしていきたいと思います。
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ご覧いただき、ありがとうございました。