常勤換算とは?

アームス日記

「常勤換算」とは?換算の意味からやさしく解説

 はじめに「換算」ってなに?常勤換算の前に知っておきたいこと

日常の業務や制度上の手続きの中で、「換算」や「常勤換算」という言葉を耳にすることがあると思います。

とくに福祉・介護業界、医療、教育などの現場では、行政への報告や人員配置の確認、加算算定などに欠かせない考え方です。

しかし、「なんとなく意味は知っているけど、きちんと説明できるかというと……」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そうした方のために「換算とはなにか」から始まり、「常勤換算」について他業種の方にもわかりやすく、そして実際の活用例や注意点まで含めて、丁寧に解説していきます。

「常勤換算」とは?換算の意味からやさしく解説

換算とは?まずは基本のキホンから

 

「換算(かんさん)」とは、ある数値や単位を、別の基準や単位に変換することを意味します。

例:1ドルを円に換算する → 為替レートをかける
  カロリーをキロジュールに換算する → エネルギー単位を変換

つまり、「異なるもの同士を、共通の基準にそろえて比較できるようにする」というのが換算です。

これを人の働き方に応用するとどうなるでしょうか?

たとえば、

 Aさん:週10時間勤務
 Bさん:週10時間勤務
 Cさん:週10時間勤務

3人いるけれど、合計30時間。
週40時間働くフルタイム職員と比べると、30 ÷ 40 = 0.75人分。

つまり、「3人いるけれど、常勤0.75人分の労働力」と言えるのです。

 

常勤換算とは?言葉の意味と目的

常勤換算(じょうきんかんさん)」とは、職場全体の勤務実態を、フルタイム職員の人数に換算して       数値化する方法です。

 非常勤、パート、短時間勤務の人を含めて、働いた時間を合計し、それを基準となる“常勤1人分”の   時間で割ることで求めます。

この方法により、実際に働いている人の総合的な労働力が“常勤何人分か”として見えるようになります。

これは行政が定める人員基準、加算の要件、監査・実地指導、経営分析など、あらゆる場面で使われます。

 

 なぜ常勤換算が必要なのか?

たとえば、次のようなケースを考えてみると

 Aさん:週40時間(常勤)
 Bさん:週20時間(パート)
 Cさん:週20時間(パート)
 Dさん:週10時間(スポット)
 Eさん:週10時間(スポット)

合計:100時間。

これを「週40時間」が常勤とされる業界の基準で計算すると:
100 ÷ 40 = 2.5人分

5人いるのに、常勤換算では2.5人分。
つまり「人数」は2倍でも「働いた時間」は半分、という実態が明らかになります。

行政や自治体に提出する人員配置表や実地指導の場では、この“常勤換算人数”が評価基準となります。

 

 常勤換算の計算方法と具体例

 ● 業種によって異なる「常勤の基準時間」

実は、福祉業界でも「週32時間」が制度上の常勤換算の基準とされている一方で、現場では「週40時間勤務」が一般的に行われているという実態があります。

これは、労働基準法において「週40時間・1日8時間」が原則とされているため、法人側が正社員やフルタイム職員の労働条件をそれに合わせて設定していることが多いからです。

つまり、制度上の常勤換算の基準:週32時間
実際の労働契約・現場運用:週40時間(法定労働時間)

という制度と現場のズレが存在しているのです。

このため、勤務実態の把握や加算申請のときには32時間を基準に計算し、給与計算や就業規則では40時間を基準とする、というように場面ごとに使い分けることが重要です。

常勤換算を行ううえで、基準となる“常勤1人分の勤務時間”は業種によって異なります。

業種・分野  常勤の基準時間
(週) 障害福祉サービス  32時間 
           介護保険サービス 32時間 
          医療機関(病院・診療所) 32~38時間程度 
          一般企業(労働基準法上)  40時間(法定労働時間) 

そのため、常勤換算を行う際には、
「どの制度・どの事業に対しての計算なのか」を明確にし、該当する基準時間を使ってください。

 〇 基本の計算式

常勤換算人数 = 全職員の合計勤務時間 ÷ 業界ごとの常勤基準時間

 〇 福祉・介護業界の基準

多くの福祉サービスでは「週32時間」が常勤の基準とされています。

 〇 計算例:週32時間が基準の場合

 ・Aさん 週32時間 → 1.00人分
・ Bさん 週16時間 → 0.50人分
・ Cさん 週8時間 →  0.25人分
 ・Dさん 週4時間 →  0.125人分

合計  1 + 0.5 + 0.25 + 0.125 = 1.875人分(常勤換算)

 「週32時間」ってどのくらい?

週32時間といってもピンとこない方のために、現実的な勤務形態でイメージしてみましょう。

 週5日 × 6時間24分勤務(6.4時間)
 週4日 × 8時間勤務
 月〜木、1日8時間勤務(金曜休み)
 午前のみ勤務 × 週6日(5.3時間×6日)

このように、育児や介護などと両立して働く人にとって「週32時間」は非常に現実的なラインです。

パートタイムでもしっかり働いている職員を常勤1人分とみなせる合理的な考え方が、常勤換算のメリットのひとつでもあります。

 

専従と兼務の違いを理解しよう

〇 専従とは

 特定の事業所・サービスにだけ従事し、他の業務にかかわらないこと。

 〇 兼務とは

 複数の事業所やサービスをまたいで勤務していること。

 〇 例 Aさん 放課後デイサービス専従 → 全時間が加算対象
          Bさん 午前は訪問介護、午後は放デイ → 該当時間だけ換算

     つまり、兼務職員は勤務時間ごとに分けて記録・換算する必要があります。

 

実地指導でチェックされるポイント

● 過去の「2.5人ルール」に注意

福祉サービスの実地指導でよく確認されるのが、「常勤換算2.5人以上」という配置基準です。これは、たとえば放課後等デイサービスで加配加算や体制加算などを算定する場合など、最低でも常勤換算2.5人分の職員が必要とされる場面があります。

かつてはこの「2.5人分」を“頭数”でそろえようとし、常勤職員1名+非常勤4名といった体制で乗り切ろうとする事例も見られましたが、

あくまで「勤務時間ベースで常勤換算2.5人以上」
でなければならないというのが現在の考え方です。

そのため、たとえ5名いても短時間勤務が多ければ、2.5人分に満たない可能性もあります。
必ず換算結果で基準を満たしているか確認しましょう。

行政の実地指導では、以下のような点が確認されます。

 勤務時間の記録(タイムカード・勤務表)があるか
 専従兼務の区分が明確か
 人員配置が基準を満たしているか(例:常勤換算2.5人以上)
 記録が過去分も含めて保存されているか

タイムカードがなくても、手書きの勤務表や業務日報などで代用可能です。
大切なのは「客観的に証明できること」です。

https://arm-s.info/wp-content/uploads/2025/07/7feab456aa0332248e41908e702351be.pdf

 

他業種への応用例

 ● 小売・飲食業

アルバイトやパートが多い店舗では、「何人いるか」より「何時間働いているか」が重要です。

例:週20時間のバイト × 5人 → 100時間
→ 常勤(40時間)換算:100 ÷ 40 = 2.5人分

 ● 教育業界

非常勤講師が多い学校で、講義時間から常勤換算すれば、実質的な配置人数を可視化できます。

● IT・クリエイティブ業

副業スタッフや業務委託メンバーを含め、リソース管理に活用できます。

 

チェックリストで再確認しよう!

 □ 勤務時間を正確に記録していますか?
 □ 基準(32時間 or 40時間など)を把握していますか?
 □ 専従と兼務を明確に分けて計算していますか?
 □ 記録は実地指導時に提示できる状態ですか?
 □ Excelなどで定期的に換算状況をチェックしていますか?

 

 まとめ 〜 常勤換算は「人の力」を正しく測る仕組み

常勤換算は、人の人数ではなく、「どれだけの時間を使って働いているか」を見える化する大切な仕組みです。

非常勤・パートでも、しっかり働いてくれている人の力を数値でとらえることができます。

この考え方は、

 スタッフの正当な評価
 適切な人員配置
 加算申請の根拠
 サービスの質の維持

すべてにつながっていきます。

 

おわりに

この記事では、「換算とは?」という基本から始まり、「常勤換算」の考え方、計算方法、注意点、活用例、他業種への応用まで、丁寧に解説しました。

今後の実務において、常勤換算を上手に活用し、制度に対応しながらも柔軟で働きやすい職場づくりに役立ててください。

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